矯正はいつから
成長期の歯並びは流動的で、とりあえず様子を見ようと提案されることもありますが、様子を見ていて状況が良くなるケースは極めてまれです。 成長とともに症状が悪化し、2次的な問題が発生することのほうが心配されます。
お子様によって、背が伸びる時期や思春期成長を迎えるタイミングが異なるように、歯の生え変わりやアゴの成長に関しても個人差があります。
適切なタイミングで必要な治療を行うことで、正常な発育に誘導することが可能となります。
個人差はありますが3歳前後で乳歯が生え揃い、6歳前後で乳歯から永久歯への交換が始まります。
12歳前後で乳歯の交換が終わり、14歳前後で奥歯まで生え揃います。
歯の生えかわりと矯正治療
3歳~6歳頃 | 6歳~9歳頃 | 9歳~11歳頃 | 12歳以降 |
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6歳前後で初めての永久歯:6歳臼歯が生え加わります。 | 乳歯から永久歯への生えかわりは前歯から始まります。 | その後、側方の歯が永久歯に交換します。 | 全ての乳歯が抜けかわり、6歳臼歯の後方に12歳臼歯が加わります。 |
(乳歯反対咬合の治療) | 一期治療(早期治療) | 二期治療(本格治療) | |
乳歯だけでも強い受け口の場合は治療の対象となります。 | 成長発育を利用し、土台となるアゴ骨のサイズや位置の改善を主に行います。 部分的な歯並びの問題も治療します。 |
すべての永久歯の装置をつけて歯並び全体を治療します。 |
歯並びの不正が成長期のお子様に与える影響
0.大人の歯(永久歯)が出てこない。
- 生まれつき歯の本数が少ない
- アゴ骨の中で引っかかっている
様々な原因により、永久歯が生えてこないことがあります。
その原因を明確にし、適切な時期に処置をすることにより、正しいかみ合わせに近づけることが可能です。
1.出っ歯、上の歯が出ている(上顎前突)
上アゴが下アゴに対し前方にあり、上アゴの前歯が前方に傾斜した状態でもあります。
出っ歯を放置した結果、鉄棒やスポーツにより上の歯をぶつけ、折れてしまうなどダメージを負うこともあります。
また、口が閉じづらいため正常な鼻呼吸を営むことが難しくもなります。
2.乱杭歯、八重歯、ガチャガチャの歯並び(叢生)
アゴが小さく、歯が大きいと収まりきれない分がデコボコの症状として発現します。
歯ブラシ行き届かないため、むし歯や歯周病の原因にもなります。
成長期においては歯が収まるようある程度あご骨を押し広げることが可能です。
3.受け口、前歯の噛み合わせが反対(反対咬合)
受け口、反対咬合を放置すると、成長が進むとにつれ下アゴがさらに大きくなり、受け口が助長されます。
極力早い時期に前歯の関係を改善しておく必要があります。
自然成長の中で下アゴは大きくなるものなので、正しい診断と適切な処置が必要となります。
4.よこずれ咬合(交叉咬合)
上アゴと下アゴの幅にズレがあるためにおきる症状です。
噛み合わせの影響でズレた場所で、噛む癖がついていることがあります。
長期的に放置されると、アゴが曲がり、お顔の変形につながることもあります。
5.上下の前歯がはなれていて前歯が使えない状態(開咬)
理想的な前歯の関係は上の前歯と下の前歯が2,3mm重なっており、上の前歯の裏側に下の前歯が当たっている状態です。
ハサミは刃と刃がしっかり当たって初めて切ることができます。
前歯も正しい状態でないと、本来の機能が発揮できず、麺類や青菜等が正しく噛み切ることができません。
6.下の前歯が上アゴの裏に食い込み、下の前歯が見えない状態(過蓋咬合)
前述の理想的な前歯の関係に対し、上の前歯が下の前歯と重なり過ぎていることもあります。
強い症状の方は、下の前歯が上アゴの裏側に食い込み、痛みを伴うこともあります。
7.すきっ歯
アゴ幅が大きく、一本一本の歯が小さいと歯並びに隙間が生じます。 隙間には食べ残しがつまったり、発音に影響(音がもれる)が生じます。 また笑った際、隙間がある歯並びはご自身の印象を著しく損ないます。
お子様の治療で使用される様々な装置
生えたての永久歯はまだ柔らかく弱いため、虫歯になりやすいです。また歯の根も完成しておりません。
そのため、小学校の中学年までは清掃性が高く、比較的ソフトな矯正力を発揮する、取り外し可能な装置を主に使用します。
高学年以降、ご自身でお口の管理がある程度出来るようになり、永久歯の本数が増えた時点で針金の固定式矯正装置が選択可能となります。
でこぼこの歯並びで主に使われる装置
プレート
あごの幅を広げる装置です。デコボコの歯並びの治療に使います。
慣れてくれば、学校でも使用していただくことになります。
クワドヘリックス
あごの幅を内側から広げる装置ですが、固定式のためご自身では取り外すことができません。
装置が付いた状態で、食事も可能です。
出っ歯の治療に用いられる装置
バイオネーター
出っ歯の症状を改善するため装置です。
上アゴの前歯を後方に下げ、下アゴを前方に誘導することにより、出っ歯が改善されます。主に自宅で使用します。
ヘッドギア
上アゴの成長を抑制することにより、出っ歯の傾向を改善します。
自宅で使用する装置ですが、時に針金の装置(マルチブラケット)と併用することもあります。
受け口の治療に用いられる装置
ビムラー
受け口の症状を改善するための装置です。
中軽度の反対咬合に対し、使用します。
複雑なバネが組み込まれているので丁寧に扱う必要があります。主に自宅で使用します。
チンキャップ
幼少期の受け口の治療に使用する装置です。
下アゴの成長の抑制を図り、骨格的に受け口の傾向を改善します。自宅で使用します。
マルチブラケット装置
皆様が最も矯正治療の装置としてイメージする針金の装置です。
歯の表面に接着するため、治療が終わるまで装置を取り外すことができません。
基本的には乳歯から永久歯への生え変わりが完了する小学校高学年以降に使用します。
ご紹介した以外ににも様々な装置がございますが、症状に応じた適切な装置の選択が重要となってきます。
お子様の治療をお考えの保護者さまへ
欧米では小さい頃からの矯正治療を行い、お口の環境を整えるという考えが定着しております。
今後は価値観のグローバル化が益々すすみ、お子様たちは我々以上に整った歯並びと上手に笑うことが求められるでしょう。
- 不正咬合(悪い噛み合わせ)によるトラブルを回避することができる。
- 大人にくらべ歯が動きやすく、痛みも感じにくい傾向にある。
- 治療の範囲が少なくて済むことがある。
- 治療後、整った歯並びをアピールするチャンスが多くある。
治療により得られるものは多くありますが、注意しなくてはならない点もあります。
お子様の年齢が低い場合、本人が歯並びを気にしていなくても、ご家族の方が将来を心配して矯正治療の相談にいらっしゃいます。
本人が極力治療を理解し、モチベーションを維持できるよう我々も努力いたしますが、毎日の管理は本人とご家族に託されます。
また、習い事や学校行事もあるとは思いますが、一生を共にする歯並びを治療するわけですから、その優先順位についてもよくよくご検討下さい。
良い治療結果を得るためには
患者様ご本人・ご家族・矯正専門医の三者の連携と
定期的な通院が不可欠となります。